副理事長
介護老人保健施設啓寿園 施設長
佐久間 正

佐久間 正

創立50周年を迎えて

この度父から兄へと継承されてきたあさかホスピタルが50周年を迎えることとなりました。この記念すべき時を皆さまとともに迎えることができ、大変誇らしく幸せに感じております。

あさかホスピタルは1963年に当時4号国道沿いで何もなかった土地に安積保養園として開設しました。精神医療のみならず、知的障害の施設や高齢者の介護をいち早く手がけ、地域の発展とともに成長して参りました。これはまさに現在の社会でも求められている機能であり、創立者である父の先見性には驚かされます。父は残念ながら私が赴任して2年後の平成12年に他界することとなりました。公私ともに充実した人生と自負するように、病床につく間際まで多忙な日々を送っておりました。自分の視力もおぼつかない状態となってもクリニックでの患者診療にはこだわり、仕方がなく診察のお手伝いをする時期がありました。今思うと父とのいい思い出となり、患者様を思う気持ち、医師としての責任感を示された気がします。

私が福島へ帰省し、あさかホスピタルでの勤務となって15年が経ちます。丁度兄が院長となり新たな病院機能への大きな転換期でもありました。まず安積保養園の名称があさかホスピタルとなり、病院の印象も一新しました。新しい病棟建設が始まり、検討していたMRI診断装置は新棟開設とともに稼働させることができました。精神科病院でも器質病変の診断まで意識した、脳と心の専門病院をうたい、さらに脳ドックも開設することができました。脳神経外科を専門にしてきた私にとって、やりがいのある病院機能となりました。

当初から画像のデータベース化に取り組んできたおかげで、後の電子カルテの導入にあたり、フィルムレス、ペーパーレスの環境が実現できております。

本格的な高齢化社会を迎え、病院を取り巻く介護関連施設の需要も増えてきました。重度の認知症や身体合併症を持った患者様も多くなり、ご家族の希望に柔軟に対応できる介護、医療が求められております。肺炎の治療や場合によっては胃瘻増設管理、褥瘡管理までの身体管理が必要となるため、栄養評価、嚥下評価、嚥下訓練の機能も多職種によるチーム医療として充実させてきました。同じように人工透析患者も増加しております。精神疾患、認知症に対応する透析施設は数が少ないため、遠方からの依頼もあり、現在30名弱の透析治療を行っております。精神科病院でもその補助機能の部分で病院に必要とされる職務をこなしながら、今後も活躍の場を広げていこうと考えております。

一昨年前に我々は東日本大震災を経験しました。直後から古い病棟が一部使用出来なくなり、私の担当する併設介護施設100床も避難せざるをえない状況でした。混乱の中、抱きかかえながら病院内に移動させ、階段リレーの配膳で夕食まで提供できたのは、全職種総動員のチームワークによるものです。それから数週間、食料や燃料も不足する中、病院機能を維持することさえ困難と思われました。私の知る範囲でも、透析が中断し危機的状況となりました。地下水から新たに透析配管して難をのがれた体験は忘れられません。皆さまの協力でなんとかこの想定外の事態に対応することができました。震災の影響は福島県の放射線問題や風評被害で将来に向け、まだまだ解決したとはいえませんが、これらの経験は今後の病院危機をも乗り越えていく自信につながっていくと確信しております。

最後に、半世紀にわたる歴史を刻むことができたのも、数多くの皆さまのご尽力があってのことと感謝したいと思います。これからも、一層のご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申しあげます。