あさかホスピタル名誉顧問関根 和房

関根 和房

誕生して半世紀

思い起こせば約50年前、前理事長 有寿先生の発議のもと、私は最前線の実行者として、精神病院の有るべき姿を模索して安積保養園が誕生した。

勿論その2年前から胎動期があり、難産の末に陽の目をみたのであるが、私は、患者の貧しい不潔な療養環境からの脱却、早期に家に帰したいというモチベーションから、当時20代だった私は、メイフラワー号に乗って、新大陸へ向うフロンティアのような気持でエネルギッシュに働いた。

最初は、本格的鉄筋づくりの構造でなく、一部木造で鉄格子などあるのが滑稽な北海道の屯田兵舎のようなものもあったが、それなりに混雑する入院環境のもとではあるが、患者同志も職員患者間にもドメスティックな雰囲気が醸成され、ぬくもりのある病院の発展であった。

平成24年7月29日に、有寿先生の13回忌があって、献盃の挨拶の際に話をさせていただいたが、先代の先生もスケールの大きい人柄で抱擁力が深く、先取の気概に富んだ方だったが、現在の佐久間啓先生は、更にグローバルの人脈に広く、建築設計、内部の機能性、壁面の色彩に至るまで芸術的センスに秀で、又、経営面でもこの目まぐるしい制度の変化、行政の介入に対して即応性があり、看護の面でも、人材の登用に優れ、右肩上りの業績が進んでいること、こういう発展的世代継承は、私の知っている限り無い。

今後も同じく、発展していくことを切に期待する。

 

今後の課題

私見ではあるが、私は医療、介護の面で必ず突き当たるであろう諸問題を憂慮している。

まず、介護保険制度だが、各個人、収入に応じ、一方的に徴収されていることは、皆、衆知の事実であるが、これは、多くの家庭で日本古来の自分の家の事は自分達の責任で看るという、保険料は支払っても利用はしていないという大勢の人の下支えがあって、はじめて成立していることであるが、きちんとした特別養護老人ホームとか老健施設のみでなく、自宅を改造した程度の託老所的施設が増えて、そのどちらも自己負担に格差が無い、むしろ、後者の方が高額になっているのはおかしく無いか。自分達を養育して、生長させてくれた親を施設に預け、共働きで生活のレベルを保つということは、そんなに大事な事なのか。保険料徴収額が限度にきていて、介護士に低報酬でしか報われないのはどんなものだろう。

医療面からみると、今後、臓器移植、IPS細胞の診床面での応用を含め、現在でも癌細胞の診療血液疾患、難治性疾患を含め、1ヶ月の診療報酬が1千万を超える人数が年々多くなっている事実にどう対処するのか。私は、日本医師会が反対を唱えている混合診療を認めるべきものと思う。国民皆保険で一定レベル以上の高額医療に対し、受益者負担と引き上げては何故いけないのか?医療費と言えど、国家予算の中で充当されるものである以上、生命の重さは天よりも高いなどといっていられる場合ではない。こういう諸条件を考えると必ず介護型病床の減額とか個人負担の増加などの問題がでてくるのは必須であろう。要するに消費税が何%上ったから解決できるものではない。各人が皆<足るを知る>価値観を共有できるようにならなければならない。

誕生して半世紀、前の30年は、佐久間有寿先生、後の20年は、佐久間啓先生と継承され、まだ発展の途上ではあるが、今後、益々理念を貫いて、立派な病院になってくれることを期待する。