あさかホスピタル 診療支援部
ゼネラルマネージャー
渡邉 忠義

渡邉 忠義

創立50周年に寄せて

あさかホスピタル創成から半世紀を迎え、今ここに自身が在ることの喜びと、そのめぐりあわせの幸運に感謝いたします。

平成19年小雪舞う夕刻、駅前の小料理屋で佐久間啓院長と膳を囲む機会を得、これからの精神科医療への想いに触れる機会がありました。想い起せばこの時が、あさかホスピタルの玄関に足を踏み入れた瞬間であったと思います。社会衰勢と医療革新の分析から、着実な一歩を踏み出すための精神科医療の戦略について、情熱的に語る院長の眼鏡の奥が光っていたことを覚えています。あさかホスピタルの夢を熱く語る院長のエネルギッシュでチャレンジリーダーの姿に、感化されている自分がそこにあったことが蘇ります。

当時、保健センターで障害者の地域生活支援業務に従事していた私は、その夜の宴からほどなく、同年4月、あさかホスピタルリハビリテーショングループに籍を置くことになり、そして今、6年目を迎えています。

精神障害者の支援制度は、平成14年に事務事業が県から市町村に移管され、平成18年には障害者自立支援法が施行となり、精神障害者への支援の力点は地域移行、地域定着へと移り始めました。同時期、あさかホスピタルでは、ささがわホスピタル閉院という大英断に踏みきっています。入院していた約100人の方々は、共同住居に住み、NPO法人アイキャンの福祉的支援を受けることで生活を再構築しはじめました。外来治療を柱に、精神科デイナイトケアや訪問看護等の医療支援と、地域活動支援センターや就労支援事業などによる生活支援は、まさに地域移行、地域定着の先駆けであったと思います。“ささがわプロジェクト”と命名されたこの精神障害者への地域支援は注目度も高く、精神科領域に従事する多くの関係者は、その展開に期待していたように記憶しています。

平成14年始動の“ささがわプロジェクト”は、精神障害者の地域生活の充実と、すべての人が共に生きる地域社会づくりに貢献しています。今そのあゆみは、高齢期を迎えてもいつまでも安心して地域で生活ができるという人生の終期を考える支援へと進んでいます。

また“ささがわプロジェクト”を通じ、数多くのグループホームやケアホームが設置され、乏しかった地域の社会資源は少しずつ充実し、あさかホスピタルの社会的な使命も果たしていると感じます。

10年間のこの着実な実績は、遡ること40年間の積み重ねに裏打ちされての成果であると思います。驚くほどの勢いとスピードで成し遂げている“ささがわプロジェクト”は、院長が先頭となって病院職員やグループ事業所職員を導き、40年間蓄えたエネルギーを効率よく動力につなげた成果であると考えます。また、家族や地域住民のあさかホスピタルに対する長年の信頼も、プロジェクトには大きな力であったと思います。「地域とともに」「地域に根ざして」等のスローガンを掲げることは容易ですが、職員、家族、地域から享受する信頼の歴史なしに地域づくりは成し得ません。つまり、先代理事長先生の尽力や残された足跡、歴史が礎となったあさかホスピタルの行う地域づくりは、50年前から始まっていたのだと思います。

この50年は、昨年発生した大震災にも揺るぐことのない強く大きな力です。病院を利用するすべての方々にそれは伝わっています。それ故、私たちは今後もさらなる社会的責務を果たすため、医療・保健・福祉の融合を目指さなければなりません。

偶然ですが、今年、私の人生も半世紀を迎えました。あさかホスピタルの半世紀の様相にはおよびもつかない人生ではありますが、同じ年齢を刻む親しい友のようにあさかホスピタルの50年を感じています。

あさかホスピタルの豊かな歴史に乾杯!